No.23 『夜と霧』 ヴィクトール.E.フランクル
生きる意味は自分で見つける
自分の人生を変えた1冊
人間を知るには、この本。
過酷な状況のなかでどう生きるか
著者と本の紹介
著者のヴィクトール・E・フランクルは、ドイツの心理学者です。彼はユダヤ人であることを理由にナチスによって強制収容所に送られましたが、奇跡的に生還しました。この本はそのときの体験をもとに人間の本質を心理学者の観点から著したものです。
この本を読んだのは少し前です。一時期何もやる気が起きないことがあって、その時になぜか極限状態における人間の心理について知れば何とかなるかもしれない、と思ってこの本を手に取りました。
『7つの習慣』(参考:『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー )を読んだ方はお分かりかと思いますが、この本が随所に引用されています。
この本は単なる収容所のルポではありません。極限状態で現れる人間の本質を描き、「人間はなぜ生きるのか」という問いに答える真理をえぐり出した最高の自己啓発書のひとつなのです。
特に
・生きる目的を見失っている人
・何のために自分が存在するのか分からない人
・極限状態の人間の心理に興味がある人
は必読です!
本の内容
【目次】
・心理学者、強制収容所を体験する
・第一段階・・・収容
・第二段階・・・収容所生活
・第三段階・・・収容所から解放されて
著者は強制収容所に収容された人間の心理を3段階に分けて考察しています。すなわち、
1.収容されたとき
2.収容中
3.解放されたとき
この中でもちろん収容中の記載がもっとも豊富です。そしてそこにまさに人間の本質が描かれています。
1.収容ショック
人間は収容されると、まず恩赦妄想を抱きます。恩赦妄想とは、「すぐに戦争が終わるんじゃないか」とか「何もかもうまくいくはずだ」という願望です。その願望は看守に対しては「自分だけは見逃してもらえる」といった形で現れます。
しかしそんな願望は一瞬で暴力によって破壊されるのです。
私が興味を持ったのは、人間がこのような状態になると「好奇心」を持つということです。これはたとえば崖のぎりぎりに立っているときに「自分がここから落ちたらどうなるんだろう。骨がぐしゃぐしゃになるのかな」と考えるあの感じです。
もうひとつなるほど、と思ったのは、「人間は異常な状況では異常な反応を示すのが当たり前」ということです。昔を振り返って自分が異常な行動をしていた、ということがあったとしても、それは状況が異常だったのならば別におかしなことではない、ということでしょうか。
2.感動の消滅状態
看守の暴力にさらされ、毎日強制労働させられるようになると、数日から数週間で人間は感情を失います。著者はこれを「内面が死ぬ」と表現しています。この状態になると苦悩さえも抹殺され、仲間が看守にボコボコに殴られても目を逸らさないようになります。
そしてひたすら自分の命を長らえさせることに集中します。
このときのことを振り返って、著者は苦しむということをこのように表現しています。
苦しむということは、それだけでも精神的に成し遂げるということ
本当に追い詰められた人間は、苦しむことさえ忘れてしまうのです。
3.解放
収容所から解放されると、人間はどういう反応をするのでしょうか。やはり嬉しいと思うのでしょうか?
違います。
解放されると、まず人間は精神が弛緩して、何も考えられなくなります。完全に感情というものが死んでしまっているので、「嬉しい」という感情さえ分からないのです。感情を少しずつ取り戻すと、今度は語らずにはいられなくなります。感情がほとばしるのです。
生きる意味
本書で最も価値ある記述が生きる意味についての部分です。
収容所では、1944年のクリスマスと1945年の新年の間の週に、かつてないほどの大量の死者を出したそうです。
医長の見解によれば、この原因は「クリスマスには家に帰れる」という素朴な希望にすがっていたが、現実にそんなことは不可能だということに気づいたから。
「強制収容所の人間を精神的に奮い立たせるには、まず未来に目的を持たせなければならなかった。」
「生きる目的を見いだせず、生きる内実を失い、生きていても何もならないと考え、自分が存在することの意味をなくすとともに、がんばり抜く意味も見失った人は痛ましい限りだった。」
クリスマスに死んだ人は、生きる目的を完全に見失ってしまったのです。
では「生きる目的」を見失わないためにはどうすればよいのか。
「私たちが生きることから何を期待するかではなく、むしろひたすら、生きることが私たちから何を期待しているかが問題なのだ」
「もういいかげん、生きることの意味を問うことをやめ、わたしたち自身が問いの前に立っていることを思い知るべきなのだ」
フランクル先生は、人間が「生きる目的を問う」こと自体が間違いだといいます。
そうではなく、「生きること」自体が各人に課題を果たす義務を与えているのであり、人間はそれに応える義務があるのだと。
ここにいう「生きること」とは、抽象的ななにかではなく、常に具体的なものです。
あなたは、生きている。
それならば、今あなたには果たすべき義務がある。
その義務を果たすことはあなたにとって苦しいことかもしれない。
しかしこの運命を引き当てたその人自身がこの苦しみを引き受けることに、
ふたつとないなにかをなしとげるたった一度の可能性がある、ということ。
あなたは、生きている。
ということは、生きることはあなたになにかを期待している、
生きていれば、未来にあなたを待っているなにかがある、ということ。
生きることに意味を求めてはいけません。
「生きること自体に」意味があるのです。
この本は読んだ人の人生を変えるパワーを秘めています。すでに半世紀以上各国で読まれてきましたし、次の世紀にもまだ名著として読み継がれる本でしょう。
冒頭でも申し上げましたが、もう一度書きます。
この本は、最高の自己啓発書のひとつです。
『夜と霧』は名著と言い切ってもいい、数少ない本です。いつかつらい状況に陥ったときのために手元に置いておくことをお勧めします。
生きる意味は自分で見つける
自分の人生を変えた1冊
人間を知るには、この本。
過酷な状況のなかでどう生きるか